FAQの構造化マークアップ方法・書き方|リッチリザルトに表示されないのはなぜか

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「FAQの構造化データを実装しても、検索結果にアコーディオンが表示されなくなった」

「これってやる意味があるの? 時間の無駄ではないか?」

多くのWEB担当者やSEO従事者が今、この疑問を抱いています。

結論から申し上げますと、「検索結果の画面占有率を上げる(CTR向上)」という目的であれば、一般企業にとってFAQ構造化マークアップはほぼ意味を失っています。

しかし、「AI(SGE)や検索エンジンに自社の情報を正しく学習させる」という観点では、依然として重要な施策です。
つまり、LLMO(AIO)対策においては有効な手段と言えるのです。

本記事では、FAQ構造化マークアップの基礎知識と正しい書き方(JSON-LD)を解説すると同時に、SEOの現場で議論されている「今の時代における実装価値」について、技術的かつ戦略的な視点で解説します。

FAQ構造化マークアップとは

FAQ構造化マークアップとは、Webサイト上の「よくある質問(FAQ)」コンテンツに対し、検索エンジンがその内容を正確に理解できるようにするための専用コード(メタデータ)を記述する施策のことです。

通常、検索エンジンのクローラーは、ページ上の文字を単なる「テキスト情報の羅列」として読み取ります。

しかし、schema.orgという規格に基づいた構造化データ(主にJSON-LD形式)を追加することで、検索エンジンに対して以下のようにコンテンツの意味を伝えることができます。

  • 「このテキストは『質問』です」
  • 「その下のテキストは、質問に対する『回答』です」

視覚的なデザインとの違い

構造化マークアップは、HTMLのソースコード内に記述するものであり、ユーザーがブラウザで見るページのデザイン(見た目)には影響しません。

あくまで「検索エンジン(ロボット)との対話」を目的とした裏側の記述です。

かつては、この設定を行うことで検索結果ページ(SERPs)上にアコーディオン形式のメニューが表示され、画面占有率を大幅に高めることができましたが、後述するGoogleの仕様変更により、その挙動は大きく変化しています。

FAQリッチリザルトは表示されなくなりました

まず、前提となるGoogleの仕様変更について正しく理解しておく必要があります。

保健・政府機関以外のサイトでは「非表示」

2023年8月のGoogleのアップデートにより、FAQの構造化データによるリッチリザルト(検索結果画面でのQ&Aアコーディオン表示)は、政府機関や保健機関に関連するサイト以外では表示されなくなりました。

以前のように、一般企業のサービスサイトやブログ記事にマークアップを行っても、検索結果で目立つ表示にはなりません。

直接的な順位上昇要因ではない

また、Googleは公式に「構造化データ自体はランキング要因(Ranking Factor)ではない」と明言しています。

つまり、このタグを入れたからといって、アルゴリズム上の加点で順位が直接上がるわけではありません。

では、なぜ今も多くのSEOのプロが実装を推奨するのでしょうか?

FAQ構造化データを実装すべき「4つの理由とメリット」

表示が変わらないにも関わらず実装する価値があるのは、「間接的なSEO効果」「LLMO(AIO)対策」において有効だからです。

(LLMOとは?)

① AIへの「学習データ」提供

GoogleのSGE(Search Generative Experience)やAIによる概要表示(AI Overviews)は、信頼できる情報源から回答を生成・引用します。

AI(LLM)は、インターネット上の膨大なテキストを学習・参照しますが、その中でも「構造化されたデータ」を好みます。FAQ構造化データによって「問い(Question)」と「答え(Answer)」のセットがタグ付けされた情報は、AIにとって文脈が明確で、非常に読み取りやすい(Machine Readable)状態です。

構造化データを用いて「質問(Question)」と「回答(Answer)」の関係性をコードレベルで明示することは、AIに対して「ここが重要な情報セットです」と翻訳して伝える行為に他なりません。

AIに内容を正しく理解させることで、AI生成回答のソースとして引用される確率を高める(エンティティ・ビルディング)効果が期待できます。

② ハルシネーション(嘘の回答)のリスク低減

AIは時に、事実と異なる回答を生成する「ハルシネーション」を起こします。

しかし、構造化データで「公式な回答」を明示しておくことで、AIが情報を抽出する際の曖昧さを排除できます。結果として、AIがユーザーに回答を生成する際、あなたのサイトの情報を「正解」として引用する確率が高まります。

③ PAA (People Also Ask) への影響

検索結果に表示される「他の人はこちらも検索」セクション(PAA)に対し、間接的な好影響を与えます。

FAQ構造化データによってQ&Aの文脈が明確になっているコンテンツは、Googleが「質問への回答」としてテキストを抽出しやすくなるため、PAAの候補としてピックアップされやすくなる傾向があります。

④ Google以外のプラットフォーム対策

SEO=Googleだけではありません。構造化マークアップは、Google検索以外でも効果を発揮します。

  • Bing: Bingの検索やCopilotでは、構造化データを積極的に活用しており、AIチャットの回答ソースとして参照されやすくなります。
  • 音声検索: スマートスピーカー等が回答を読み上げる際、構造化されたデータが参照されやすいという特性があります。

【実践】FAQ構造化データの書き方(JSON-LD)

現在、Googleが推奨しているJSON-LD(ジェイソン・エルディー)形式での記述例を紹介します。

以下のコードをコピーし、自社のQ&Aの内容に書き換えて、Webページの<head>タグ内、または<body>タグ内に設置してください。

基本のテンプレート

HTML

<script type=”application/ld+json”>

{

  “@context”: “https://schema.org”,

  “@type”: “FAQPage”,

  “mainEntity”: [{

    “@type”: “Question”,

    “name”: “ここに質問文を入れます(例:構造化データとは何ですか?)”,

    “acceptedAnswer”: {

      “@type”: “Answer”,

      “text”: “ここに回答文を入れます。HTMLタグの使用も一部可能です。”

    }

  }, {

    “@type”: “Question”,

    “name”: “2つ目の質問文を入れます”,

    “acceptedAnswer”: {

      “@type”: “Answer”,

      “text”: “2つ目の回答文を入れます。回答の中に<a href=’https://example.com’>リンク</a>を含めることも可能です。”

    }

  }]

}

</script>

記述のポイント・注意点

  • @type: 必ずFAQPageを指定します。
  • mainEntity: 複数の質問と回答を配列([])の中に格納します。
  • ページ上の表示と一致させる: ユーザーに見えていない隠しテキストをマークアップすることはガイドライン違反(スパム行為)となります。必ずページ上に表示されているQ&Aと内容を一致させてください。

実装後の検証方法

コードを作成したら、本番公開する前に必ずエラーがないかチェックしましょう。Googleが提供している無料ツールで簡単に検証できます。

  1. リッチリザルト テスト (Rich Results Test)
    • Google公式の検証ツールです。コードを貼り付けるか、URLを入力するだけで、文法エラーや欠落しているプロパティがないかを確認できます。
  2. Schema Markup Validator
    • Schema.org公式の検証ツールです。より詳細な構造化データの検証が可能です。

【戦略判断】リソースをどこまで割くべきか?

最後に、SEO担当者や経営者が持つべき「判断基準」を整理します。

すべてのページに手動で設定するのは工数の無駄になる可能性があります。以下の基準で判断することをおすすめします。

状況アクション推奨
CMS等で自動化できる場合【実装推奨】
WordPressのプラグイン等で手間なく出力できるなら、オフにする理由はありません。AIへのシグナルとして残すべきです。
重要なLP・記事の場合【実装推奨】
コンバージョンに関わる重要なページや、競合が多いビッグキーワードの記事では、わずかな差が優位性を生むため、手動でも実装する価値があります。
手動で工数がかかる場合【優先度:低】一般記事に対して、毎回手書きでコードを作成して埋め込む工数があるなら、その時間を「記事品質の向上(一次情報の追加など)」に使ったほうが、SEO効果は高いです。

まとめ

FAQ構造化マークアップは、「手っ取り早く検索画面を目立たせるテクニック」ではありません。

LLMOの時代においては、「AIという新しいユーザーに対して、自社の情報を正しく伝えるための手段」として機能します。

目先の順位だけでなく、将来的な「選ばれる情報源」になるための基礎作りとして、適切に活用していきましょう。