「紹介や既存顧客頼りの経営から脱却し、安定的に顧問先を獲得したい」
「士業として独立したが、具体的にどう営業すればいいかわからない」
このような悩みを抱える士業の先生方は少なくありません。競争が激化し、顧客の情報収集方法も多様化する現代において、士業事務所が成長を続けるためには、受け身の姿勢ではなく、戦略的かつ能動的な新規顧問先獲得の取り組みが不可欠です。
この記事では、士業事務所が新規の顧問先を獲得するために明日から実践できる具体的な施策を、オンライン9施策とオフライン5施策の合計14選を分かりやすく解説します。
この記事を読めば、自事務所の強みを活かした顧問先獲得の仕組みを構築するための、具体的な道筋が見えるはずです。
目次
顧問先獲得を成功させる戦略作り
正しい戦略を立てず、やみくもに施策を打っても成果には繋がりません。まずは、自身の事務所の今置かれている立場を明確にし、『どんなターゲットにどのような内容を届けるか』を定めて戦略の土台を固めましょう。
自事務所の「強み」を棚卸しする
まずは自事務所の強みを客観的に分析します。SWOT分析などのフレームワークを使うと、「得意な専門分野(相続、M&Aなど)」「得意な業種・規模(ITベンチャー、医療法人など)」「他にはない提供価値(迅速な対応、資金調達支援)」などが明確になります。

理想の顧問先(ペルソナ)を具体的に描く
次に、強みを最も評価してくれるであろう理想の顧客像(ペルソナ)を設定します。「どのような業界で、どんな課題を抱えている経営者か」「なぜ他の事務所ではなく、自事務所を選ぶのか」を具体的に言語化することで、今後の施策の精度が格段に向上します。
例えば、以下のように自事務所の強みを評価してくれる顧客のペルソナを考えることが重要です。
【顧客のペルソナイメージ例】
事務所の強み | 顧客のペルソナ |
資金調達に強みを持つ税理士 | ・創業期のスタートアップ企業の代表 ・売掛金回収期間の長い建設業や運送業の社長 |
派遣法や労働関連法令に強い弁護士 | ・人材派遣会社や人材紹介会社などの社長 ・派遣社員を受け入れている会社の法務担当者 |
オンラインでの新規顧問先獲得施策9選
インターネットを活用すれば、時間や場所の制約を超えて、潜在的な顧客にアプローチできます。
ホームページのSEO対策
ホームページは事務所の顔です。「士業 顧問先獲得」の第一歩として、ターゲットが検索するキーワードを意識したサイト設計を行いましょう。事務所の近隣エリアキーワードを掛け合わせることで、そのエリアの事務所を探しているユーザーからのアクセスが期待できます。
(キーワード例:「渋谷区 税理士」「新宿区 弁護士 顧問」「心斎橋 社労士 労務相談」など)
※士業事務所が取り組むおすすめキーワード例は、以下の記事にて詳しく書いていますのでご参考ください
【士業のSEO対策はキーワードが重要!集客・問い合わせを増やすSEO戦略】
また、専門性の高いブログ記事や事例紹介を充実させてロングテールキーワードを意識することで、課題解決を求める顕在層のユーザー獲得が見込めます。
コンバージョン率を高めるために、料金表や問い合わせフォームを分かりやすく設置することも重要です。
リスティングなどのWeb広告
検索キーワードに連動して表示されるリスティング広告は、課題が明確な「今すぐ客」にアプローチするのに非常に有効です。少額からでも始められるため、費用対効果を見ながら運用しましょう。
その他にもInstagramやFacebookに出稿できるMeta広告、YoutubeのCMに出稿できるYoutube動画広告、GoogleやYahoo!などのディスプレイ広告などもあります。
「今すぐ客」つまり顕在層の見込み顧客へのアプローチは、検索連動型のリスティング広告が効果的です。
コンテンツマーケティング
お役立ち資料(ホワイトペーパー)の配布やノウハウ系ブログ記事の発信を通じて、まだ顧問契約を具体的に考えていない潜在層に有益な情報を提供することで、将来的な見込み客のリード獲得ができます。
潜在顧客のリード情報をリスト化することで、メルマガやウェビナーなどでナーチャリング(顧客育成)が可能になり、新規契約の確率が高まります。
また、ウェビナーや新サービス案内などを行う際に、潜在層のリストがあることで集客しやすくなります。
SNSの活用
X(旧Twitter)やFacebook、経営者層の多いLinkedInなどを活用し、専門家としての知見や事務所の雰囲気を発信します。人柄が伝わることで、問い合わせへの心理的ハードルを下げることができます。
特に最近はXを使って有益な情報を発信し、セルフブランディングと集客を行う士業の先生が増えています。
事務所サイトへの誘導にもつながるので、まずはアカウント開設を行いましょう。
オンラインセミナー(ウェビナー)
法改正や助成金など、ターゲットが関心を持つテーマでウェビナーを開催します。参加者リストは、その後のアプローチに繋がる貴重な資産となります。
士業系ポータルサイトへの登録
各士業の専門ポータルサイトに登録することで、事務所の認知度を高め、新たな顧客との接点を増やします。
ただし、ポータルサイトは出稿料や成約手数料などが高く、集客コストが跳ね上がり利益の減少を招きます。
また、ポータルサイト内で比較されるため安値での戦いに陥り、収益に影響を及ぼしやすいです。収益性を高めたい、事務所経営を安定化したいと望む場合は、ポータルサイトでの集客は控えた方が良いでしょう。
メールマガジンの配信
獲得した見込み客リストに対し、定期的にメールマガジンで有益な情報を送り、関係性を維持・育成することで、将来的な顧問先獲得に繋げます。
メールマガジンへの登録は、コンテンツマーケティングやSNSマーケティング、動画活用などで増やすことができます。各施策を実施する際、顕在層だけでなく潜在層も意識することで中長期での集客成功につながります。
専門性と人柄を伝える「YouTube活用」
士業の顧問先獲得において、YouTubeは今や無視できないツールです。複雑な制度を分かりやすく解説する動画や、人柄が伝わるQ&A動画は、視聴者との間に強い信頼関係を築きます。テキストでは伝わらない「話しやすさ」「信頼感」をアピールできるのが最大の強みです。
口コミを活用したMEO(マップエンジン最適化)
Googleマップ上で事務所情報が上位に表示されるよう対策します。特に地域密着型の事務所にとっては重要です。顧客に口コミ投稿を依頼し、評価を高めることが顧問先獲得に繋がります。
オフラインでの新規顧問先獲得施策5選
顔の見える関係構築を重視するオフライン施策も、依然として強力な営業手法です。
「紹介」の仕組み化:リファラルマーケティング
ただ知り合いからの紹介を待つのではなく、紹介を能動的に生み出す仕組みを作りましょう。既存の顧問先や提携先に、紹介しやすいパンフレット等のツールを提供したり、紹介御礼のルールを明確にしたりすることが有効です。
また、こちらから積極的に顧問先や提携先のクライアントになりえる人や会社を紹介することが大切です。紹介を受けた人たちは、御礼にあなたの力になりたいと思って意識的に紹介先を考えてくれるきっかけになります。
ギバーであることが紹介をもらうリファラルマーケティングには大切な要素です。
盤石な紹介ルートを築く「他士業・金融機関との連携」
銀行、信用金庫、保険代理店、そして他分野の士業と定期的に情報交換の場を持ち、相互に顧客を紹介し合えるネットワークを構築します。これは士業が顧問先を獲得するための王道とも言える手法です。
地域の経営者と繋がる「商工会議所・各種団体への参加」
地域の経営者が集まる商工会議所や業界団体に積極的に参加し、セミナー講師や相談員を務めることで、専門家としての認知度と信頼性を高めます。
また、セミナー講師や講演会での登壇経験をサイトに掲載することで、SEOにおける権威性を高めることにも繋がります。
積極的に参加し、オフラインオンライン両面から権威性を高めましょう。
新たな人脈を切り拓く「交流会・セミナーへの参加」
異業種交流会などに参加し、効果的な名刺交換と、その後のフォローアップ(御礼メールや情報提供など)を徹底することで、人脈を将来的な顧問獲得に繋げます。
交流会だけで終わらせては、数多くいるライバルから選んでもらうのはハードルが高く成約につながりにくいのが現状です。交流会後は、メルマガでの情報提供やウェビナーの案内、SNSでつながるなどして関係性を高め、信頼獲得を行っていきましょう。
権威性を高めるブランディング「出版」
専門家としての権威性を一気に高めるのが書籍の出版です。出版をフックにメディア露出や講演依頼につながることがあります。
また、信頼性と権威性の向上によってブランディングが高まり、成約率も高まります。
書籍を出版した先生の体験談によると、書籍を読んだ読者(見込み客)からの問い合わせも増えるようです。
施策を成功に導くための3つのポイント
オンラインとオフラインを連携させる
例1:セミナーで名刺交換した相手に、後日YouTubeチャンネルやブログ記事のURLを送る。
例2:書籍にウェブサイトのQRコードを掲載し、オンライン相談につなげる。
このようにオンラインとオフラインの施策を組み合わせることで、効果は倍増します。
KPIを設定し、PDCAを回す
「月間問い合わせ数」「面談設定率」「成約率」などのKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に効果を測定・分析しましょう。成果の出ない施策は改善し、良い施策はさらに伸ばす、というサイクルが成長の鍵です。
ツールを活用して効率化する
顧客管理や営業活動の記録には、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)といったツールの活用も有効です。業務を効率化し、より本質的な活動に時間を使いましょう。
【事例紹介】顧問先獲得に成功した士業事務所の取り組み
事例1:税理士事務所
創業支援に特化したブログとYouTubeでの情報発信を継続。金融機関とも連携し、Web経由での新規法人設立に関する問い合わせが月10件を超え、融資支援まで含めた高単価の顧問契約を獲得。
事例2:社会保険労務士事務所
助成金と労務リスクをテーマにしたウェビナーを毎月開催し、SNSで告知。毎回安定した集客を実現し、参加者の中から毎月コンスタントに顧問先を獲得する仕組みを構築。
まとめ
本記事では、士業事務所が新規の顧問先を獲得するための具体的な施策を、オンライン・オフラインの両面から解説しました。
行動こそが将来の安定的な顧問先獲得の第一歩につながります!
本記事のサマリ
- 戦略の土台: まずは自事務所の「強み」と「ターゲット」を明確にする。
- オンライン施策: HP、広告、コンテンツマーケティング、SNS、YouTubeなどを活用し、潜在顧客にアプローチする。
- オフライン施策: 紹介の仕組み化、他士業・金融機関との連携、各種団体への参加で信頼を築く。
- 成功のポイント: オンラインとオフラインの連携、KPI設定とPDCA、ツールの活用。
全ての施策を一度に始める必要はありません。まずは自身の事務所の状況に合わせて、「これならできそう」と感じたものから一つでも試してみてください。その小さな一歩が、5年後、10年後の事務所の安定と成長を支える大きな礎となるはずです。