SEO対策の経験者やSEOの勉強をしたことがある人であれば、一度くらいは「エンティティ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
近年のGoogle検索では、エンティティSEOという考え方が非常に重要視されています。この考え方をおろそかにすると、良いコンテンツを作って、狙ったキーワードを対策しても検索順位は上がりづらくなっています。
エンティティSEOは、従来のキーワード中心の対策とは一線を画す、現代のSEO対策の鍵となる概念です。Googleの検索アルゴリズムは、単なるキーワードとコンテンツの一致だけでなく、その背景にある「人」や「物」「事」などの「意味」や「情報」「文脈」を深く理解するようになりました。
この記事では、SEOにおけるエンティティの意味や、重要性、そして具体的な対策方法までを徹底的に解説します。
記事を読めば、エンティティSEOの基本概念から、エンティティ評価を高めるための具体的な実践方法まで学ぶことができます。そして、Googleにあなたのビジネスやあなた自身を正しく認識させ、本質的で持続可能なSEO戦略を手に入れることができます。
エンティティとは?SEOにおける定義・考え方
エンティティ(Entity)とは、直訳すると「実体」「実在」「存在」といった言葉になります。実在する固有のもの、独立した存在を指し、Googleなどの検索エンジンが認識する「明確に識別できる、独立したひとつの概念や実体」のことを意味します。
難しく聞こえますが、要は特定の「人」や「物」や「事」、つまり「固有名詞」に近いものだと考えてください。
一般的な名詞(例:車)と固有名詞(例:レクサス LS)を区別して考えると分かりやすくなります。以下の表を見てください。
分類 | エンティティとして認識される例(固有名詞) | エンティティとして扱われにくい例(一般名詞) |
製品/ブランド | レクサス LS, iPhone 16 Pro, ザ・リッツ・カールトン | 車, スマートフォン, ホテル |
人物 | 大谷翔平, イーロン・マスク | 野球選手, 経営者 |
企業/組織 | トヨタ自動車株式会社, Google LLC | 自動車メーカー, IT企業 |
場所 | 東京スカイツリー, スターバックス | 電波塔, カフェ |
イベント | 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博) | 万博 |
Googleは、これらの無数のエンティティを、ナレッジグラフと呼ばれる巨大な知識のデータベースで管理し、それぞれの関係性(線)を理解しています。
近年のGoogleの検索エンジンは、単なるキーワード(文字列)を追うのではなく、その裏にある「モノ・コト・ヒト」(エンティティ)を深く理解しようと進化しています。例えば、あなたがGoogleで「ワンピースの作者」と検索すると、「尾田栄一郎」という答えが瞬時に表示されますよね。これはGoogleが「漫画・ワンピース」と「尾田栄一郎」という作品と人物それぞれのエンティティの関係性を理解しているからです。
このようにエンティティの点が線で結ばれていくイメージがナレッジグラフを理解するのに非常に重要です。
この「エンティティ」を軸とした考え方こそが、これからのSEOの核となる「エンティティSEO」です。
エンティティSEOとは何か?
エンティティSEOとは、あなたのWebサイトやコンテンツが「誰が発信しているのか(発信者・エンティティ)」、そして「何について語っているのか(トピック・エンティティ)」を、検索エンジンに正しく伝達して認識させ、Googleからの評価を最大化するための一連の戦略的アプローチです。
つまり、Googleの巨大な知識データベースに、あなたの会社やサービス、あなた自身、そしてあなたの専門分野を「信頼できる情報源」として認識してもらう活動と言えます。
エンティティの信頼性が高まることで、エンティティの主体となるサイトやページから発信されるコンテンツが高く評価されやすくなります。つまり検索順位に影響してくるのです。
なぜエンティティSEOが重要なのか?
理由は主に3つあり、これらはGoogleが掲げる「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」と密接に結びついています。
検索意図への的確な応答のため
ユーザーの曖昧な検索(例:「渋谷 おしゃれ カフェ」)に対して、Googleが質の高い検索結果を返すには、個々のカフェ(エンティティ)の特徴や評判を深く理解している必要があります。エンティティSEOを強化することで、あなたのビジネスがこうした検索意図にマッチする存在だとGoogleに認識されやすくなります。
情報の信頼性(E-E-A-T)を証明するため
E-E-A-Tの中でも特に「誰が」言っているかは極めて重要です。同じ「健康法」に関する情報でも、匿名のブロガーが書いた記事と、著名な医師(エンティティ)が監修した記事とでは、信頼性が全く異なります。エンティティとして確立されることは、あなたの専門性・権威性・信頼性をGoogleに示す最も強力な方法なのです。
AIによる検索(SGE)時代への対応のため
GoogleのSGE(Search Generative Experience)のような生成AIは、ゼロから文章を作るのではなく、信頼できる情報源(エンティティ)から情報を引用して回答を生成します。これからの時代、検索結果の最上部に表示されるAIの回答に引用されるかどうかは、エンティティとして確立されているかが大きく影響します。
エンティティSEOの具体的な5つの対策方法
ここからは、エンティティを高めるためにあなたのサイトで具体的にどのような対策を行えば良いか何をすべきかを解説します。
対策1:自社と関連するエンティティを定義・明確化する
まず、あなたもしくはあなたの会社が「何をエンティティとしてGoogleに認識させたいか」を明確に定義します。
- 中心となるエンティティ: 会社名、店舗名、ブランド名、サービス名、著者名など。
- 関連するエンティティ:
- 製品・サービス: 取り扱っている具体的な商品名(例:セールスフォース)。
- 人物: 代表者、専門家、監修者。
- 場所: 本社の所在地、店舗の住所。
- トピック: あなたが専門家として語るべき分野(例:BtoBマーケティング, サイバーセキュリティ対策)。
これらを洗い出し、エンティティとして”自信はどういう存在で、どんな専門性があるのか”を明確にし、Googleに認識してもらうようにしていきます。また、サイトやインターネット上で一貫して使用する公式な名称を決定してください(例:「(株)」と「株式会社」を統一する、英語またはカタカナのどちらかで統一するなど)。
また、店舗やオフィスを持つビジネスの場合、「Googleビジネスプロフィール(GBP)」もエンティティの重要な情報源です。
GoogleビジネスプロフィールとNAP情報を最適化する
- 全項目の正確な入力: ビジネス名、住所、電話番号、カテゴリ、営業時間などを正確かつ最新の情報に保ちます。
- NAP情報の統一: Webサイト、GBP、その他のポータルサイトやSNSで、Name(名前)、Address(住所)、Phone(電話番号)を完全に一致させます。これがズレていると、Googleは別々のエンティティだと誤認する可能性があります。
- 投稿と写真の活用: 定期的に最新情報やイベント、写真を投稿することで、ビジネスがアクティブであることを示します。
対策2:E-E-A-Tの源泉となる「コアページ」を磨き上げる
エンティティを定義したら、次はそのエンティティの「情報の解像度(専門性)」と「権威性」を高めます。特に「運営者情報(私たちについて/About Us)」や「著者情報」「製品・サービス紹介」といった、エンティティの核となるページ(コアページ)は、ユーザーとGoogleがあなたの専門性や信頼性、権威性などを判断する上で最も重要視する場所です。
Googleは、これらのコアページに書かれた具体的な情報を通じて、サイトやサービス、運営者、著者などのエンティティを評価します。ペラ1枚の会社概要やスペックだけの製品ページでは、あなたの情熱も専門性も伝わりません。コアページにはなるべく専門的で詳細な情報を載せるようにしましょう。
サイトのエンティティを高める具体的な施策
それでは、これらのコアページのエンティティを高めるための具体的な施策をページ種類別に解説します。
「運営者情報/私たちについて」ページ
運営者ページでは、誰が運営しているのかを明確にし、信頼性を高めます。具体的には以下のような内容を追加していきます。
- ストーリーを語る: 単なる会社概要や沿革だけでなく、「どのような想いで創業したのか」「社会のどんな課題を解決したいのか」というミッションやビジョンを熱量をもって記述します。
- 「人」を見せる: 代表や役員のプロフィールは顔写真を入れましょう。経歴、資格、実績、メディア掲載歴、SNSアカウントへのリンクなどを詳細に記載し、「誰が」運営しているのかを明確にします。可能であれば、チームメンバーの紹介も加えると親近感と信頼性が増します。
- 客観的な事実を示す: 会社所在地、連絡先はもちろん、第三者機関からの受賞歴や認証マークなども掲載します。
「著者情報」ページ
著者の紹介は、コンテンツの信頼性や専門性を担保するコアページです。記事ごと、あるいは著者紹介ページで、著者の専門分野、学歴、経歴、保有資格、学会やシンポジウムなどでの発表実績などを詳細に記述します。その著者が「なぜそのテーマについて語る資格があるのか」を証明することが目的です。
「製品・サービス」ページ
- スペックの先にある価値を伝える: 機能や価格の羅列に終始せず、「この製品が生まれた背景(開発秘話)」「他社にはない、こだわりのポイント」「お客様のどのような悩みを、どう解決するのか」といったストーリーを描写します。
- 社会的証明(ソーシャルプルーフ)を活用する: 実際に利用したお客様の声(レビュー)、具体的な導入事例、第三者による評価などを豊富に掲載し、客観的な信頼性を高めます。
Point: これらのコアページは、一度作って終わりではありません。新しい実績や事例が生まれたら、積極的に更新し、常に「情報の鮮度」を保ち続けることが重要です。
対策3:構造化データでGoogleに直接意図を伝える
構造化データ(スキーママークアップ)は、Webページの内容をGoogleが理解しやすい形式(言語)で記述するためのものです。これはエンティティSEOにおいて最も直接的で効果的な施策の一つです。
ここでは、JSON-LDという形式による記述方法についてご説明します。
具体的には、ページの内容に応じた構造化データを<head>内に記述します。
実装すべき代表的なタイプ
- Organization(組織): 全ページ共通で、会社名、ロゴ、公式サイトURL、SNSアカウントなどを記述します。
- Person(人物): 著者情報ページや記事ページで、著者名、専門分野、経歴などを記述します。
- WebSite(ウェブサイト): サイト名やサイト内検索ボックスの有無を伝えます。
- Article(記事): 記事のタイトル、公開日、著者情報などを記述します。
- BreadcrumbList(パンくずリスト): サイト内でのページの階層構造を伝えます。
JSON-LDコードの記述例(組織)
<script type=”application/ld+json”>
{
“@context”: “https://schema.org”,
“@type”: “Organization”,
“name”: “株式会社サンプルマーケティング”,
“alternateName”: “Sample Marketing Inc.”,
“url”: “https://www.example.com/”,
“logo”: “https://www.example.com/logo.png”,
“sameAs”: [
“https://twitter.com/example”,
“https://www.facebook.com/example”,
“https://www.linkedin.com/company/example”
]
}
</script>
Point: sameAs には、企業の公式SNSアカウントやWikipediaのページなどを指定することで、Web上の様々な情報が同一のエンティティに属することをGoogleに伝えられます。
対策4:コンテンツと内部リンクでエンティティの関連性を編み込む
「サイト内のコンテンツがどのように関連し合っているか」は、Googleがそのサイトの専門性を判断する指標となります。サイトコンテンツの関連性を高めるには、トピッククラスターという戦略の考え方を取り入れます。
トピッククラスターモデルの実践方法について
1.ピラーページの作成
まず、あなたの専門分野における中心的で広範なトピックを一つ選び、それを網羅的に解説する「ピラーページ」を作成します。これは、トピッククラスター全体のハブとなる中核ページです。例えば、専門分野が「コンテンツマーケティング」であれば、コンテンツマーケティングの概要から全体像を網羅的に説明したページがピラーページ(中核ページ)にあたります。
2.クラスターコンテンツの作成
次に、ピラーページに関連する、より具体的で詳細なサブトピックについての記事を複数作成します。これらが「クラスターコンテンツ」です。例えば、「コンテンツマーケティング」というピラーページに対して、「ブログ記事の書き方」「SEOライティングのコツ」「ホワイトペーパーの作り方」といった、さらに掘り下げたテーマの記事がクラスターコンテンツとなります。
3.内部リンクで繋ぐ
作成したクラスターコンテンツから中心となるピラーページへ、リンクを張ります。また、関連性の高いクラスターコンテンツ同士も、文脈に合ったキーワード(アンカーテキスト)で繋ぎます。この網目状のリンク構造によって、あなたのサイトが特定の専門領域について、深く包括的な情報を持っていることをGoogleに示すことができ、専門性の高いサイトであると評価されやすくなります。
4.記事内で関連エンティティに言及する
記事を執筆する際は、中心のトピックだけでなく、それに関連する人物、企業名、ツール、イベントといった固有の名称(エンティティ)にも自然な形で言及しましょう。これにより、コンテンツの文脈がより豊かになり、情報の信頼性が高まります。
対策 5:外部からの権威ある言及(サイテーション)を獲得する
あなた自身が「私は専門家です」と言うだけでなく、第三者から「あの人は専門家だ」と言及されることが、権威性を確立する上で不可欠です。
権威ある情報源からの言及
業界メディアやニュースサイトなどから紹介、言及されるように広報活動を行います。プレスリリースを配信したり、専門家として取材を受けたりして、質の高いサイトから言及(サイテーション)や被リンクを獲得しましょう。
また、公的機関や業界団体のサイトに掲載されるように、公的機関や権威性のある業界団体に所属したり活動することも重要です。これらのサイトに掲載されると、信頼性は飛躍的に高まります。
Wikipediaに掲載される
Wikipediaに自社のページが作成されることは、エンティティとして確立された強力な証拠となります。特にナレッジパネルの情報源はWikipediaの情報を元にすることが多い傾向にあります。
ただし、Wikipediaは宣伝目的で作成できるものではなく、第三者から中立的な観点で書かれるものです。また、特筆性に値するなどの客観的な基準を満たす必要があります。
好意的な口コミやレビューを集める
Googleビジネスプロフィールの口コミを集めることや、ECサイトでの商品レビューを増やすこと、SNSでの認知を高めることもサイテーション獲得になり、エンティティを高めることに寄与します。
ただし、悪い評判ではなく好意的な評判を得る必要があります。ビジネス、商品、あなた自身の評価を高めるように鋭意努力を続けていきましょう。
エンティティSEOの効果測定と役立つツール
エンティティSEOは成果が見えにくいと思われがちですが、以下の指標でサイテーションの効果やSERPsでの変化を検証できます。
- 指名検索数の増加: Google Search Consoleで、あなたの会社名、ブランド名、個人名での検索クエリが増加しているかを確認します。これはエンティティの認知度が高まっている証拠です。
- ナレッジパネルの表示と充実度: 指名検索した際に、検索結果の右側に表示される情報ボックス(ナレッジパネル)が表示されるか、その内容が充実しているかを確認します。
- 関連キーワードでの上位表示: 指名検索だけでなく、「〇〇(地域名) + 〇〇(サービス名)」といった関連キーワードでの順位が安定・上昇しているかを見ます。
- ツール活用: SEMrushやAhrefsといった専門ツールには、ブランドの言及数をモニタリングする機能があり、サイテーションの獲得状況を追跡できます。
エンティティSEOのよくある誤解と失敗しないための注意点
エンティティを高めることがSEOにおいて重要であるのは理解いただけたと思いますが、かと言ってキーワード対策をおろそかにしていいわけではありません。ユーザーが実際に検索するキーワードの検索意図を理解し、コンテンツに反映させることは依然として重要です。エンティティとキーワードはどちらか一方だけで済ますものではなく、両輪で考え対策するべきものです。
注意点は焦らないこと
エンティティ(=評判や信頼)は、短期的に考えるべきものではありません。専門性を高める、信頼を得る、広報PR活動などでメディアに掲載してもらうなどは、中長期的に考えながら取り組むべきものです。その結果として、良質な被リンクの獲得やサイテーションの獲得、認知の向上に繋がっていきます。Googleのポリシーに違反するようなリンクスパムやサイトの評判の不正使用を行うことはペナルティ対象となり、SEO評価を著しく下げることになります。ポリシー違反に該当するような違反行為は絶対に行わないように注意しましょう。
エンティティとAI検索の未来
エンティティSEOは、次世代の検索体験への準備でもあります。
SGE(AIによる概要)の情報源になる
AIが生成する回答は、Web上の信頼できる情報を基にしています。エンティティとして確立されていれば、あなたのサイトがAIによって「専門的な情報源」として引用される可能性が高まります。
マルチモーダル検索への対応
今後、テキストだけでなく画像や音声、動画での検索が増加していきます。Googleレンズで商品を写した際に自社のECサイトが表示されたり、スマートスピーカーに質問した際に作成したコンテンツが読み上げられたりするためには、エンティティの理解が必要です。
エンティティSEOに取り組むことは、未来のあらゆる検索インターフェースに対応するための投資なのです。
まとめ
最後に、この記事の要点をまとめます。
- エンティティとは、Googleが認識する明確な概念や実体のこと。「固有名詞」のようなものと捉えると分かりやすい。
- エンティティSEOとは、自社あるいは個人の専門性やビジネス内容をGoogleに正しく認識させ、信頼を勝ち取るための戦略。
- 具体的な実践方法は以下の5ステップ。
- 自社のエンティティを定義する
- 信頼性を高めるコアページをブラッシュアップ
- 構造化データの実装
- コンテンツと内部リンクの最適化
- 外部からの権威ある言及の獲得
エンティティSEOは、単なる順位上昇のためのテクニックではありません。それは、あなたのビジネスやあなた自身が、デジタル世界において「何者であるか」を確立し、ユーザーとGoogleの両方から永続的な信頼を得るための本質的な活動です。
まずは自身や自社のエンティティ定義から見直し、プロフィールページや会社情報ページなどエンティティのコアとなるページのブラッシュアップから始めましょう。小さな行動の積み重ねが未来への投資となります。